卒業式

学校長式辞

 本日ここに、多くの保護者の皆様のご出席をいただき、三木学園白陵中学校第46回卒業式を挙行する運びとなりました。 もとより本校は、正式な6年制の中等学校ではないものの、6年間の中高一貫教育を掲げて高いレベルの学習を生徒に課しており、その前半を皆さんは成しおえたということであります。ただ今卒業証書を授与しました155名の卒業生の皆さんに、まずご卒業おめでとうと申し上げます。

 その3年間の最後の1年、自然の移り変わりに敏感な日本人は、何度も驚きの声を上げました。今年の夏の暑さは尋常でなかった、今年は暖冬と言っていたのに、こんなにも雪がふるのか、いつになったら春の訪れがあるのか等々。私はそんな時、「自然も人間も、時々私たちの予想に反することをよくするもので、それこそが自然な天地、自然な人間社会なのだ」と言ってきたように思います。

 しかし、この11日に起こった「東北地方太平洋沖地震」の凄さには言葉を失いました。私たちは平成七年に大きな地震を経験していますが、今回の10メートル以上にも達したという大津波は、建物や高速道路を倒壊させたあの地震と全く違うものでした。大きな船舶を陸地に押し上げ、多数の家・建物や自動車を玩具のように流し去る姿、一つの町が一日で更地のようになった姿は、とても現実のものとは思えませんでした。

 皆さんの中にも、東北地方に縁戚関係のある人がいるかも知れませんが、そうでない人にとっては、死者と行方不明者の数がどれくらい増えるのか、時にその数のみが関心事になってしまうケースがあります。私は、吉田前校長のご逝去に際し、死は数で扱うべきではないという主旨の話をしました。その人とつながっている者にとって、死はいわば絶対的なものであるからです。

 そして、今回の地震の規模は「わが国観測史上最大のもの」と言われておりますが、考えるまでもなく、日本の立地条件は太古以来大きくは変わっていませんから、私たちの祖先も昔から何度もこういう災害に直面してきたはずです。科学文明が発達していなかった昔は、現代以上に無力感に襲われたことでしょう。そういう中から、日本特有の「無常感」、すべてのものははかない存在であり、人間はそれを悲しむことしかできない、あるいは神仏に頼るしかないという「無常の感覚」が生み出されてきたのかも知れません。日本人が美しいものにあこがれ、こだわるのは、それらがいつ、どういう形で失われるかわからない、本当にはかない存在だという認識と表裏であったと考えるべきでしょう。

 しかし、同時にそれらは日本人のさまざまな智恵を生み出してきました。それは現在も受け継がれ、地道な研究として続いており、皆さんも将来、その一翼を担うことが期待されているのです。本当の意味でのエリートとして、国家社会や人々が求めていることに応える生き方が求められるわけです。もちろん人の生き方は、まず自分に向いていること、自分が好きなことを第一に考えて選ぶべきであり、地震の研究や原子力工学、国土の整備に係る仕事が最重要事ということではありません。そもそも国家社会をうまく運営していくためには、基礎的な理学も、生命科学も、各種工学も、政治学や経済学も、より基本的な哲学や教育の分野もすべて重要です。本校の生徒は6割から7割が理系に進みますが、ことは理系であろうと文系であろうと関係がなく、社会や人々のためにという視点を併せもって、自分の人生を考えるかどうかがポイントになるということです。

 私は、本校の特徴は生徒と教師が、また生徒同士がともに学んでいくところにあると思っています。やや古い感覚かも知れませんが、かつて理想とされたような教育のあり方につながるものを感じます。旧制姫路高等学校のポリシーを受け継いでいることが関係するのかも知れません。

 皆さんはこの3年間、各教科の学習に精出すとともに、「命」をテーマにした多彩な取組をしてきました。阪神淡路大震災について学び、戦争の話を祖父母から聞き、愛や性、出産等のことについても学習したと聞きました。新しい、意欲的な試みでした。私がことあるごとに言っている、「人間的に大きくなる」ということにつながるものです。ただ、意識してほしいのは、どんなことでも本気でそれを学ぼうとしなければ、すなわち、その学習で苦労することがなかった場合、身につくものはきわめて少ないということです。同じことを学んだのに、人によって得るものが違うことはよくありますが、得られるものが少ないというのは、学ぶタイミングが会わなかったか、本人の本気になる度合いが弱かったかのいずれかにその原因があります。卒業にあたって3年間を振り返る意味は、そういうところにもあります。そうして初めて、卒業「Commencement」が 「始まり」を意味するというのが蘇ってくるのです。

 保護者の皆様には、改めてご子弟のご卒業について、心からお喜びを申し上げます。この学年は卒業生全員がそのまま白陵高校に進みます。これからの三年間もいろいろなことが起こり、お互いに悩むことも多いかと思います。その際、ご子弟の教育について、私どもはご家庭と手を携えて、ご子弟が持っている資質を十分開花させることができるよう、心をこめて指導・支援をしていきたいと考えています。

 卒業生の皆さん、これまでの3年間の生活を振り返り、同時に3年後の自分の姿を思い描いてください。そして、今日の卒業式が本当によき「始まり」となることをお祈りし、式辞といたします。

 平成23年3月19日
                    学校法人三木学園白陵高等学校 校長    斎藤興哉

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卒業式

第46回中学校卒業式です。

2011.03.19


開式前の卒業生。


卒業証書が代表に授与されます。


優等賞、努力賞、功労賞が授与されます。


学校長の式辞。


卒業生が一列ずつさっと立って、そろって退場します。


卒業生が退場していきます。


光の中へ。

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