卒業式
学校長式辞
三木学園白陵中学校第52期生は、本日ここに卒業式を迎えました。
ご出席いただいております多くの保護者の方々、そして皆さんと一緒にその達成を祝い、
併せて今ここに至っている意味を考えたいと思います。
本校は中高一貫教育を謳っていますが、正式の6年制中等教育学校ではありません。
そのために中学の卒業式も、高校の入学式もあるのです。
しかし、皆さんはほぼそのまま白陵高校に進学しますので、卒業を特に「おめでたい」とは思わない人もいるでしょう。
しかし、卒業の意味を考えることは必要です。その理由は二つあります。
一つは、生徒全員が何の悩みも傷もなしにここまで来たのではなく、またこのあと、
全員が白陵に進学するのでもないからです。そして今日の姿は間違いなく3年間の歩みの結果であり、
一つことを達成した姿なのです。二つに、祝うというのは「おめでとう」と言ってケーキを食べることが第一ではありません。
ご両親・ご家族を始め、多くの人にお世話になってここまで成長してきたことを確認することです。
私は、そういうさまざまな意味を込めて164名の皆さんに「ご卒業おめでとう」と言いたいと思います。
この3年間を振り返えれば、日々の学習のことが蘇ってくるでしょう。
皆さんは、ひたすら予習・復習に精を出し、基本的なことは確実に覚えるように言われてきました。
時には、暗記が勉強のすべてか、と思ったかも知れません。
しかし、皆さんの一番の経験は、学習したことが染み通るように分かっていくのを実感したこと、
そしてその心地よさを感じたことであり、また、自分に相応しい学習方法をつかみつつあることです。
そういう皆さんの姿が客観的にどう見えたかと言うと、ある先生は、
「けじめがつかず、学習意欲が見えない時があった」という言い方をしました。
しかし同時に、「学年で何か大きなことをしようとすると、急にエネルギーが高まって予想以上のものを造り上げる」とも。
私が52期生を意識するのは、何と言っても「演劇学年」ということです。
よくぞ入学してすぐ、中1でミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」に挑戦し、
そこそこの仕上がりを見せてくれました。
そしてその成功があっただけに、中3の合唱劇「ガリレオの生涯」の方がより大変だったかも知れません。
いずれも、素人が、しかも学年全体を組織して取り組むのですから、普通の感覚では躊躇してしまうのですが、
この学年は主任を先頭にめげることなく、また保護者の協力も得て、やり遂げました。
自分がこんなことができるのだとびっくりした人も多かったでしょう。
こういう学年の試み、日々の学習、部活動等、さまざまな活動によって皆さんは徐々に白陵生になってきたのです。
しかし、すべての人が同じように白陸生になってきたのではありません。
人間は皆違っており、それは時に不安を抱かせますが、人は誰でも、他とは違う自分を抱えて生きていかなければなりません。
私たちがいつも見慣れたものと違う事柄について学ぶのは、一義的には視野を広げるためですが、
自分の、他と違う生き方を納得するためでもあるのです。
それに関連し、私が最近「なるほど」と心打たれたエピソードを二つ紹介します。
動物は、半ば本能ですが、子育てに大変熱心です。ゴリラもそういう動物ですが、ゴリラの親たちは、
自分の子どもをけんかに勝たせようとはしないと言います。
親も子も負けるのは嫌いなのですが、勝つと自分も相手も傷つき、そして自分が孤立することを知っていて、
だから、けんかが始まると周囲のゴリラは負けそうなゴリラに加勢し、仲裁をするというのです。
見事な文化だと思いませんか。
障害を持つ人のすごさにも、私はいつも教えられます。ある書道家のお母さんにダウン症の娘さんがいました。
勉強も、地位やお金も、競争社会の構造も分からず、人を妬むこと羨むことも知らないその娘は、
その時その時を100%の絶対時間として生きていて、不安もなく常にニコニコしています。
その子はいつもピンクの名刺を持っていて、声をかけてくれる誰にでも、その名刺を渡していました。
ある時犬をつれたご夫婦が来られた時、その子は犬にも丁寧に両手を添えて「どーぞ」と言って名刺を渡し、
大爆笑になったそうです。その娘さんは、美しい花を見ても手を合わせ、夜道を照らす月にありがとうとお礼を言います。
すべてのものや景色に命と魂を見る感じ方に、お母さんは自分の平等の考え方などは陳腐そのものだと悟ったと言っていますが、このお母さんもまたすごい人です。
私は、そして皆さんもこんな生き方はできません。
しかしそれぞれまったく違う、こんなすばらしい「命」が満ち満ちているのが私たちの世界です。
少し数学ができないから、運動能力がないから、あの子にかなわないからといって、
自分の努力を無道味に思うような発想がいかに貧困そのものであるか、が分かると思います。
話は変わりますが、この間4字熟語の「身土不二」という言葉を知りました。
身と土は無関係な2つのものではないということで、
そして体はによいのは地元の旬の食品や伝統食だという意味にもなったそうです。
考えてみれば当然のことですが、そこから、「ブロッコリーや葱や白菜など、厳しい冬に育まれる野菜は、
みなその寒さに必死に耐えようとして一生懸命糖分を増やす、だから甘味が強い」と言っているのを聞きますと、
私たちの社会も同じだと思いました。皆さんにとっては、この白陵が「土]=環境です。その環境を、斜めに構えず、
丸ごと正面から引き受けることが一番真っ当な生き方になるということです。
もちろん、昨年の卒業式でも申したのですが、皆さんは、
常に一つのやり方を貫くのが自分を堅持することだと思わなくてもいいのです。
間を置いて、何もしない余裕というか、回りを見渡す時間をもち、自分を静かに見つめることも一つの方法です。
この学年の卒業生は、そのまま白陵高校に進む生徒とともに、他の進路を選んだ生徒もいます。
それぞれ皆、迷ったり、思い切ったり、覚悟を固めたりした上での進路選択です。
今後とも学校は、生徒、ご家庭と一体になって教育を進めたいと考えています。
卒業生の皆さん、これまでの3年間の生活を振り返り、同時に3年後の自分の姿を思い描いてください。
そして、今日の卒業式が本当によき「新しい出発」の契機となることをお祈りし、式辞といたします。
平成26年3月20日
学校法人三木学園白陵中学校 校長 斎藤興哉
卒業式
第49回中学校卒業式です。
2014.03.20
52期生の卒業式が始まります。
卒業証書授与。
学年団の先生方。
校長式辞。
「一同、礼!」
拍手の中を卒業生が退場します。